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アーカイブ: 4月 2020

口腔内症状を呈する
ウィルス性疾患

皆さま こんにちは。
今月より臨床研修をさせていただきます瀬津昂斗です。
大学6年間で培った知識を十二分に生かし、患者様一人一人に親身になって治療が出来るように、日々研鑽に励んで参りますので宜しくお願い致します。

4月になり新生活の季節ですが、世間では連日、新型コロナウイルス(COVID-19) に関する報道が流れており、WHOによるパンデミック(世界的な大流行)宣言もされました。

皆さまもご存じの通り、感染経路として現時点では飛沫(ひまつ)感染と接触感染の2つが考えられています。
つまり、感染者の咳やくしゃみ等に存在するウイルスを他者が口や鼻から吸い込むあるいは、感染者が咳やくしゃみを押さえた手で触れた様々な物を他者が触れて感染するという2つの感染経路です。
これらのことを踏まえた上で感染予防として、まずは、石鹸を用いた手洗いやうがい、アルコール消毒(70%)をこまめに行い、感染の拡大を抑えていきましょう。
詳しくは、厚生労働省のホームページに記載されていますのでご参照下さい。

https://www.mhlw.go.jp/stfeeisakunitsuite/bunya/kenkouiyou/dengue fever_ga00001.html

新型コロナウイルス感染に伴う症状として発熱や咳などがありますが、味覚障害や嗅覚障害といった症状もあるという報告があり、味覚異常が主訴で歯科を受診される方もいらっしゃるかと思います。
さて、このようにウイルス感染によって口腔内に症状が出る疾患がいくつかありますので、これを機にご紹介させていただきます。

①単純ヘルペスウイルス感染症
単純ヘルペスウイルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)がありますが、口腔に感染するほとんどが HSV-1 です。
小児期に初感染した後、神経節に潜伏したウイルスが免疫力低下によって再発(再帰感染)するのが特徴です。
初感染と再帰感染では症状が異なり、HSV-1の初感染で発症するのがヘルペス性歯肉口内炎で、再帰感染で発症するのが口唇ヘルペスです。

・ヘルペス性歯肉口内炎
HSV-1 初感染後5日程で発症することが多く、発熱や倦怠感に始まり、歯肉や舌、口腔粘膜に水疱が多発します。
この水疱が破れ、凍傷になることで口腔粘膜全体に赤みが広がり、強い接触痛を伴う症状のため、食事や歯磨きが困難になり栄養状態の悪化や口臭がみられますが、抗ウイルス薬の服用により約2週間で口腔内は傷あとを残さずに治ります。

・口唇ヘルペス
HSV-1 の再帰感染によって唇やその周辺に水疱が生じ、かゆみやピリピリ感を伴うことがありますが、抗ウイルス薬の服用により約1週間で治ります。

②帯状疱疹
神経節に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再帰感染により特定の神経支配領域の皮膚や粘膜に水泡を生じる疾患です。
初感染では水症が発症し、再帰感染によって帯状疱疹が発症します。
顎顔面領域では三叉神経や顔面神経に生じます。
特に三叉神経に多く生じ、顔の周囲の皮膚や口腔粘膜に水疱を伴います。この水泡が破れて潰瘍を形成しますが、抗ウイルス薬の服用により3週間程で治ります。

・帯状疱疹後神経痛
帯状疱藤が治った後、患部に強い神経痛様疼痛が後遺することがあり、これを帯状疱筋後神経痛と呼びます。主にプレガバリンという薬を用いて治療します。

・Ramsay Hunt症候群
顔面神経の神経節が侵された場合、外耳周囲の水泡、顔面神経麻痺、めまいや難聴の3症状を示すものを Ramsay Hunt症候群と呼びます。抗ウイルス薬の服用などにより治療します。

③ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルスA群(主にA4)の感染による水疱を伴う疾患で、夏に流行し子供に多い病気です。
高熱とともに明頭部に発赤や水泡がみられ、強い接触痛があるため食事困難となり栄養不良を伴います。夏にかかりやすいので小児は特に脱水に注意が必要です。
抗ウイルス薬の服用ではなく、安静や栄養、水分補給により1週間程で治ります。

④手足口病
コクサッキーウイルス A16 やエンテロウイルス 71 の感染による手や足、口の周囲に水泡を伴う疾患で、夏に流行し子供に多い病気です。
高熱とともに口腔粘膜に水泡がみられます。
この疾患もヘルパンギーナ同様に、抗ウイルス薬の服用ではなく安静にすることにより1週間程で治ります。

⑤麻疹(はしか)
麻疹ウイルスの感染により、全身の皮膚に赤い発疹を生じる疾患です。
皮疹に先立って、口腔内の頬粘膜に Koplik班と呼ばれる白斑が生じるため、麻疹の早期発見に役立ちます。
は小児科医と連携して治療していきます。

以上5つの疾患をご紹介しましたが、どれもウイルスという目では見えないものに感染することで発症する病気です。
新型コロナウイルス同様、こまめに石鹸による手洗いやうがい、アルコール消毒を行うことで感染予防につながります。

私も歯科医師として、また医療従事者の一人として感染予防をしっかりと行った上で、患者様の診療に携わって参りますのでよろしくお願い致します。

以上を臨床研修開始のご挨拶とさせていただきます。

末尾となりますが、新型コロナウイルスの早期の終息を心より祈っております。

歯科医師
瀬津昂斗

参考文献
・標準口腔外科学 第4版

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