アーカイブ: 3月 2021
歯科衛生士が提案するアンチエイジング
アンチエイジング=健康⻑寿医学
『抗加齢医学(Anti-Aging Medicine)=アンチエイジング』という⾔葉は近年テレビや雑誌で多く取り上げられており なじみ深いものとなって来ております。
しかし 『アンチエイジング=美容医学』・年齢に逆らった⾒た⽬に執着し 無理やり若返ろうとするという意味・イメージが先⾏していますが、『抗加齢医学の定義』は
〝元気で⻑寿を享受することを⽬指す理論的・実践的科学“という考えを意味しています。
⼈は外的ストレス(喫煙・不規則な⽣活⾏動・公害ガス・紫外線など)や内的ストレスによる⾝体を錆びつかせる活性酸素・フリーラジカルが、体内に多く発⽣します。
その結果 ⽣活習慣病が発⽣し⽼化あるいは加齢が加速的に促進されます。
健康な⾝体で過ごすために、「アンチエイジングの三原則」があります。
1 不必要な物は排泄→プラーク・⻭⽯除去
プラークや⻭⽯の⻑期付着・沈着は炎症を誘発します。
慢性的な炎症が⻭周疾患発症や重度進⾏ 全⾝疾患(糖尿病・認知症や癌・脳卒中・⼼疾患)と深く関わってきます。
2 不⾜分は補う→トリートメント
過剰なブラッシング等によりは表⾯には⾒えない細かな傷が作られます。
また 頻回な酸性の飲⾷や摂取の仕⽅により⻭の内部からカルシウム成分が溶出し不⾜してしまいます。
⻭科医院で⾏うトリートメント(⻭⾯研磨)でナノ粒⼦ハイドロキシアパタイトペーストを擦り込む作業は不⾜分を補うアンチエイジング⾏動となります。
3 ⼝腔の防御⼒→「唾液⼒」
唾液の中には多くの化学物質が含まれておりすぐれた作⽤があります。
電解質 | ナトリウム・カリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄・銅・亜鉛など |
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糖質 | ブドウ糖とその中間代謝物・乳酸など |
タンパク質 | アミラーゼ・リゾチーム・糖タンパク・免疫グロブリン・酵素など |
⾮タンパク性 窒素化合物 |
尿酸・クレアチニン・など |
その他 | コルチゾール・グルカゴンなどのホルモン・ビタミンなど |
組織修復作⽤ | 成⻑因⼦が傷を治す |
潤滑作⽤ | 機械的刺激から⼝腔粘膜を保護、安静時唾液の性質が⼤きく関与 |
浄化作⽤ | ⾷物中の炭⽔化物やプラークが産⽣する酸などを洗浄 |
緩衝作⽤ | ⼝腔内の pH を中性に維持、解禁の繁殖を抑える |
抗菌作⽤ | 外来の病原微⽣物の侵⼊を防御 |
再⽯灰化作⽤ | 無機質を供給 |
消化作⽤ | デンプン分解、脂肪分解作⽤ |
味覚作⽤ | 味覚物質を溶解し味覚の促進 |
噛む事で副交感神経が刺激されて作られる若返りホルモンに「パラチン」軟膜を保護する事で病原体の侵⼊を防ぐ「ムチン」(糖タンパク)「ペルオキシターゼ」は⼝腔細菌の増殖や酸産⽣を抑えます。
IgA.IgG(免疫グロブリン)は細菌のコロニー形成を阻害し⼝腔内組織への付着を防⽌します。
各々が役割を担当し⼝腔内感染から守ってくれています。
唾液の⼒で⼝腔をカリエスや⻭周病から守る。素晴らしい予防効果・アンチエイジングが得られます。
【⻭科衛⽣⼠が提案できるアンチエイジング 】
1 予防
⻭周病は⽣活習慣病という観点から⻭周病は病的⽼化と考えられます。
予防を⾏い健康な⻭と、⻭周組織で噛める 話せる 飲み込める。
効果あるの機能年齢を若く保つことができます。
2 美的 PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
治療場⾯では炎症改善なため。予防の場⾯では⻭周組織確⽴と維持のため。
より健康で美しい⼝元を、作り上げていきます。
3 顔の筋⾁のトレーニング
⼝元には 30 種類もの表情筋が存在します。
きちんと筋⾁を動かして咬合し⿐呼吸をする事により、唾液分泌促進・美しいフェイスラインが得られます。
⽇々無意識に過ごしているときはわずか20%程度の筋⾁しか使えていません。
⽚⽅噛み・⻭ぎしりなどで過剰な⼒がかかり⾎液・リンパ液の循環がわるくなり⽼廃物や⽔分がたまり眼や頬にむくみが出てしまいます。
4 ⼝腔内・外マッサージ
マッサージすることにより⾎流を促し炎症コントロールのほか 疼痛緩和や組織の活動をよくする効果があります。
⾝体がリラックス状態になると漿液性のサラサラ唾液が⽿下腺、顎下腺から分泌されます。
良質な唾液には酸素が多く含まれており、中性で無臭です。
5 ⼝臭
各種細菌等によって分解されてできる窒素有臭気、⾷物残渣、細菌などの浮遊物質など不安定な⼝腔環境 ⼝臭を引き起こす原因はたくさんあります。
予防には⾍⻭・⻭周疾患処置はもちろん、たくさんの唾液分泌を促し、唾液⼒を活⽤して⼝腔内環境を安定することが⼤切です。
⼝臭コントロールには⼝腔ケア以外に⾷の摂り⽅にも関係します。
よく噛む・空腹時 緊張時など⾃律神経の作⽤により唾液分泌が少ない時は ph 値の低い飲⾷物を避ける・⾷物繊維の多い物を摂る・⽔分補給などがあります。
健全に過ごせるためにアンチエイジングという視点でも⻭科医院が⾏動実践医学の窓⼝になっていければと思っております。
⻭科衛⽣⼠ 増⽥
2021年3月23日 カテゴリ:未分類
顎関節症の症状と治療
こんにちは,当院にて研修をさせていただいている研修医の出口詩織と申します。
新型コロナウイルスが猛威を振るっておりますが,皆さん如何お過ごしでしょうか。
お仕事もテレワークに切り替わり外出できずストレスを感じる方も多いのではないかと推察しております。
このストレスにより無意識のうちにお口は上下の歯を強く噛みこんでしまいます。
最近では,このような原因により顎の関節にトラブルを生じ,来院される患者さんが増えております。
今回は,顎のトラブルの顎関節症についてご紹介させていただこうと思います。
1.顎関節症とは?
顎の関節や顎を動かしている咀嚼筋の痛み,顎関節の雑音,開口障害あるいは顎運動異常を主要な症状とする障害を総称して顎関節症と呼ばれています。
2.診断
顎関節症は,顎が痛む(顎関節痛,咀嚼筋痛),口が開かない(開口障害),顎を動かすと音がする(顎関節雑音)のうち一つ以上の症状があり,これらと同じような症状がでることがある顎関節症以外の病気が無い時に顎関節症と診断されます。
実際には,患者さんへの問診,あごの動きの検査,あごや咀嚼筋の痛みの検査,レントゲン検査,必要に応じてMRI検査などを行い,顎関節症以外の同じような症状を呈する疾患を鑑別した上で診断を行います。
3.症状
<顎関節症病態分類>
顎関節症は,学会指針で次のように整理されています。
1型:咀嚼筋痛障害
2型:顎関節痛障害
3型:顎関節円板障害
a,復位性
b,非復位性
4型:変形性顎関節症
4.治療
【咀嚼筋痛障害(1型)】
筋肉マッサージや開口ストレッチ,患部を温める方法,マイオモニター(低周波治療器)による治療があります。
場合によっては,スタビライゼーションスプリントと呼ばれる歯列を覆う装置の作成を行います。
これを使用する目的としては、あごの緊張などをほぐし動きを自由にすることです。
あごの関節を本来の正しい位置に導くことによって症状の緩和につながります。
あとは上の歯と下の歯の接触を緩和することです。
接触を緩和することであごの負担を減らします。
もう一つ方法として挙げられるのが、筋弛緩剤と呼ばれる筋肉のこわばりを和らげるお薬を投与します。
スタビライゼーション型スプリント
マイオモニター
【顎関節痛障害(2型)】
鎮痛薬の投与を主に行い,場合により抗不安薬や抗うつ薬の投与を行います。
顎関節可動域訓練も併用して行います。(下顎前歯に人差し指,中指,薬指をかけ開口時痛よりもう少し強い痛みを感じる程度に開口させその状態で10秒我慢する)
【顎関節円板障害(3型)】
a復位性
十分に患者様に説明を行い,経過観察とします。
理由としては積極的な治療が必要ないためです。
ただし,関節部に雑音発生を恐れて開口を自主的に制限している場合に経過が不要となる場合があるので,積極的で十分な開口をご指導させていただきます。
b非復位性
非復位性の状態とは関節部分のクッションのような役割をしている関節円板が前にずれてしまうことで顎の関節の骨がロックされるために口が開かない状態をいいます。
顎の関節には側頭骨と呼ばれる頭の骨の一部との間に少しだけ空洞があり、この装置を使用することであごの負担を減らせるのでこの空洞をつぶすこと無く維持していく目的でスタビライゼーションスプリントを用います。
【変形性顎関節症(4型)】
変形性顎関節症とは、顎の関節を使って口を開け閉めしているうちに関節部分のクッションのような役割をしている関節円板がすり減ってくることで生じるものです。
関節の骨が元の形に戻そうと修復をするため顎の骨が変形するので、痛みなど様々な症状が表れます。
臨床症状としてあごの関節の痛み、口が開きにくい状態あるいはあごの関節の痛みのいずれか一つ以上を呈するので治療はほかの病態に対する治療に準じて行います。
顎の関節の変形で咬合不全が生じた場合には補綴歯科治療や矯正治療が必要となります。
顎の関節のトラブルは種々な症状があり,的確な診断に基づいた適切な治療が大切です。
顎に違和感を感じた場合には歯科医院にて一度ご相談ください。
歯科医師 出口詩織
参考文献,
顎関節症治療の指針 2018 (一般社団法人日本顎関節学会 編)
新編チャートでわかる 顎関節症の診断と治療(医歯薬出版株式会社依田哲也 著)