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歯を抜かなくてはならなくなったら?〜あなたなら,どうする!?〜

皆さま、こんにちは。
11月になり、残暑の中に秋の気配が漂いはじめました。
少し肌寒い日も多く、毎日の体調管理がとても難しい季節ですね。
さて、皆さんは自分の歯を抜いたことがありますか?
もしくは、抜かなければならなくなった時の事を考えたことがあるでしょうか。
今日は【もし自分の歯を抜かなければならなくなったとき、どういう治療の選択肢があるのか】についてお話していきます。

〇そもそも抜歯が必要になるケースとは?

自分の歯は一生もの。
出来ることなら、ご自身の歯は出来るだけ抜きたくないですよね。
では、歯を抜かなければならないケースとは一体どんな場合なのでしょうか。
一般的に多いのが以下のケースです。

1.歯周病が大きく進行してしまった場合
重度の歯周病で根の奥深くまで歯槽骨が吸収している場合や、歯が大きく動揺している場合は抜歯の適応になることがあります。
大臼歯の根分岐部病変が大きく進行した場合にも抜歯になることがあります。

2.歯が割れてしまった場合
外傷や咬合力によって、歯が根の部分まで縦に割れてしまった場合などは、抜歯の適応になります。

3.むし歯が歯茎よりも深い位置まで進行した場合
むし歯が進行し、歯茎よりも深い根の位置まで進行してしまった場合は、抜歯の適応になることがあります。

その他、根管治療を行ってもなかなか症状が改善しない場合や、歯が原因で急性上顎洞炎や急性骨髄炎を引き起こしている場合も適応になることがあります。
あくまで抜歯はどうしても歯が残せない場合の最終手段として行うことが多い治療です。
上記に示したのは大人の歯(永久歯)のお話です。
子供の歯(乳歯)の場合や、歯科矯正に伴う抜歯の場合は例外となります。

〇歯を抜いた!そのまま放置しておくとどうなるの?

自分の歯を抜いた後、空いた部分にはどんな治療が必要なのでしょうか。
実は、歯を失ったまま放置してしまうと、以下に示す様々な障害が生じてしまいます。
具体的に生じる障害について詳しく見ていきましょう。

・一次性障害:
歯を抜いた直後に起こる障害です。
見た目(外観)の障害に加えて、食べづらさを感じたり(咀嚼障害)、歯があるときと異なった感覚に違和感を感じたりします(感覚障害)。
発音に影響が出ることもあります(発音障害)。

・二次性障害:
歯を抜いてしばらく放置した場合に生じてくる障害です。
抜いた部分だけでなく、周りの歯や歯茎にも影響が出始めます。
対合歯といわれる噛み合わせの対になっている歯が飛び出してきたり(挺出)、隣の歯が倒れてきたりすること(傾斜)で、歯並びやかみ合わせに変化が起こります。
歯並びが変化することで、食べ物が歯と歯の間に挟まりやすくなったりもします(食片圧入)。
食べ物が挟まりやすくなると、その部分のブラッシングが困難になり、齲蝕や歯周病にもなりやすくなります。

・三次性障害:
歯を抜いて数年経過した後に起こりうる障害です。
嚙み合わせが変化することで、障害は歯だけにとどまらず、顎関節やお顔の筋肉に影響を及ぼします。
顎関節症や咀嚼筋障害が代表的です。

このような障害を放置すればするほど、治療の難易度は上がってしまいます。
咬合高径(かみ合わせの高さ)や咬合平面が乱れてしまい、いざ治療を始めようとしても、元のかみ合わせには戻せないケースが多いのです。

〇歯の一次性、二次性、三次性障害を防ぐための治療法とは?

これまでに、歯を抜いたまま放置することで様々な障害が起こることを説明してきました。
ではこれらの障害を防ぐために、抜いた後にはどんな治療をすべきなのでしょうか。
歯を抜いた後の治療法には大きく3つの選択肢があります。

上記に示したように、3つの治療の選択肢にはそれぞれ利点と欠点があります。
また、患者様のお口の中の清掃状態や歯茎の状態、残っている歯の状況、かみ合わせの状態、全身的な疾患の有無、服薬状況など様々な因子から総合的に判断した結果、患者様によっては治療の選択肢が限られる場合もあります。
担当の歯科医師としっかり話し合い、ご自身がしっかりと納得された上で治療を進めていくことが大切ですね。

さて、歯を失った時の治療法について少しイメージが掴めたでしょうか。
ご自身の歯はできるだけ大事に残していきたいものですが、いざというときには様々な治療の選択肢があります。
お口の中のトラブルで何か気になることがありましたら、お気軽に当院の歯科医師や歯科衛生士にお声掛けください。

最後になりますが、令和6年8月から当院にて臨床研修をさせていただいております井内茉莉奈です。
大学で学んだことを生かしながら、患者様に寄り添い、立派な歯科医師になれるよう日々精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

歯科医師
井内 茉莉奈

【参考文献】
藍稔, 五十嵐順正,山下秀一郎 編、スタンダードパーシャルデンチャー補綴学第4版、学建書院、2024
村上伸也, 申基喆, 齋藤淳, 山田聡 編、臨床歯周病学 第3版、医歯薬出版株式会社、2020
田上順次 奈良陽一郎 山本一世 斎藤隆史 監修、保存修復学21、永末書店、2022
日本補綴歯科学会ホームページ

【図引用】
歯科素材屋さんホームページ

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