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星陵日記

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歯科治療における
アナフィラキシーショック

もうすぐ立春ですね。
先日、近くの公園で梅の蕾を見つけました。
寒気の中にも早春の息吹が感じられ、ほっこりした気持ちになりました。
とは言え、まだまだ厳しい寒さが続きそうです。
防寒対策をしっかりして、風邪やインフルエンザに負けないように頑張りましょう。

少し前になりますが、小児の歯科治療中に患児が死亡したというニュースを、耳にした方もいらっしゃるのではないかと思います。
患児が死亡に至った要因は複数考えられます。
まず、①治療時に使用するロール綿での窒息による低酸素症
次に、②局所麻酔でのアナフィラキシーショックによる低酸素症
そして、③麻酔中毒による低酸素症
これらの3つの要因は、すべて最終的には低酸素症が死因となりますが、それぞれの誘因は異なります。
例えば、窒息は物理的な上気道閉塞によって起きるもので、ある程度、事前に予防が可能です。
しかし、アナフィラキシーショックや麻酔中毒は予防が難しく、迅速な診断・対処が求められます。
今回は、アナフィラキシーショックに焦点を当てて説明していきます。

1.アナフィラキシーショックとは?

表1:抗原-抗体反応の違いでアナフィラキシーショックにはⅠ型〜四型アレルギーまであります。

種類 Ⅰ型 Ⅱ型 Ⅲ型 Ⅳ型
関与する
抗体
IgE IgG・IgM IgG・IgM T細胞
関与する
細胞
肥満細胞
好塩基球
K細胞・NK細胞
マクロファージ
好中球
血小板
マクロファージ
キラーT細胞
代表的
疾患
気管支喘息
アナフィラキシー ショック
重症筋無力症 血清病
ループ腎炎
ツベルクリン反応
接触性皮膚炎
(金属アレルギー)

その中でも、もっとも症状の進行が急速で命に関わるのがⅠ型アレルギーで、その中にアナフィラキシーショックは分類されています。
よくテレビで拝見するピーナッツを食べて起きるショックやミツバチに刺されて起きるショックがこれになります。

2.発生機序

肥満細胞や好塩基球の膜表面の抗原特異的IgEにアレルゲンが
結合することで、これらの細胞から即時にケミカルメディエーター
が放出されます。
この放出されたケミカルメディエーターの働きにより様々な
アナフィラキシー症状が出現します。

3.アナフィラキシーの症状

①皮膚症状:蕁麻疹
②呼吸症状:気管支喘息
③循環症状:頻脈(100/回以上)・血圧低下
④消化器症状:腹痛・嘔吐・下痢

アレルゲンの暴露から症状発現までの時間が短いほど重症化します。

4.見分け方

局所麻酔中毒 アナフィラキシー
ショック
迷走神経反射
原因 局所麻酔薬の多量投与 局所麻酔薬に対する
抗原抗体反応
副交感神経の優位
症状 しびれ感・耳鳴り
痙攣
意識消失
呼吸抑制・停止
昏睡
心肺停止
皮膚症状:蕁麻疹
呼吸症状:気管支喘息
循環症状:頻脈・低血圧
消化器症状:腹痛・嘔吐・下痢
顔面蒼白
徐脈・低血圧
悪寒
意識消失
嘔吐・悪心
めまい

5.発生頻度

アナフィラキシーショックの発生頻度は0.0054%で、その中で危篤になるケースは3-10%と言われています。

6.発生した場合の対応(対処)について

万一、アナフィラキシーショックが起こってしまった場合に歯科医院ではまず、①救急車の要請(迷わず119番!!)
次に②モニタリング・酸素投与・AED装着、更に③アドレナリンの筋肉注射エピペンの使用
→アレルギー体質の場合、両親や患者本人が持っていることあります。

7.アナフィラキシーショックを起こさない安全な治療はどんなものか?

アナフィラキシーショックを絶対に起こさない安全な歯科治療方法はありません。
なぜなら、様々な薬剤や材料がアレルゲンとなるためです。
アレルゲンが特定されていれば、使用しなければ起きませんが、ほとんどの患者が自分では把握していません。
そのため、起きないようにするのと、起きた場合に迅速に対応できるようにしておくことが、最も安全な歯科治療だと考えます。
では、起きないようにするには?
問診が重要です。
アナフィラキシーショックのアレルゲンは家族で似ているため、両親や兄弟姉妹に局所麻酔薬でアナフィラキシーショックの既往がある場合、その種類の局所麻酔薬の使用を避けるか、アレルギー検査(パッチテスト、DLST、Skin Testなど)を行うのも良いかもしれません。
また、果物(グレープフルーツなど)にアレルギーがある場合にはグローブなどに含まれるラテックスでアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
その他には歯科でも抗生剤や解熱鎮痛剤を処方しますので、薬剤へのアレルギーについても患者から伝える必要があります。
それにより、アレルゲンと疑われる薬は処方しないようにします。

8.アナフィラキシーショックの既往がある患者さんへの対応は?

「局所麻酔薬でアナフィラキシーショックを起こしたことがある」や「局所麻酔薬にアレルギーがある」の患者さんは歯科治療を受けられないのか?まず、以下の対応を考えます。

(1)アレルギーを起こした時の詳細を聞く
→大抵の場合は迷走神経反射や脳貧血のケースが多い。
①どのような症状を認めたか?
→皮膚症状や呼吸症状など
②症状は局所麻酔薬を注射してから、すぐに起きたか?
→大抵は15分程度で出現する
③緊急搬送された
→アレルギーの検査はされたか
④それとも、しばらく休憩して帰宅したか?
⑤局所麻酔を行なったのは、何度目か?
→1回目か2回目に起きやすい

中には、迷走神経反射や脳貧血のこともあります。
これらを総合評価して、さらに以下の対応を考えていきます。

(2) 局所麻酔薬の種類を変更する
①2%リドカイン1/8万エピネフリン含有(オーラ注®・キシロカイン®)
②3%プロピトカイン(シタネスト®)
③3%メピバカイン(スキャンドネスト®)
→上記の三種類が歯科領域では局所麻酔薬として使用されています。

③アレルギー検査を皮膚科に依頼する

④大学病院への紹介

大学病院には麻酔科医が常駐していて、緊急対応が迅速に行います。
また、全身麻酔下で局所麻酔を併用せずに治療が行えます。

9.安全な設備はどのようなものか?

アナフィラキシーショックが起きた場合に真っ先に必要なものが揃っていることが安全です。
具体的には以下の設備が挙げられます。

①アドレナリン(エピペン)
②モニター
③AED
④酸素ボンベ
⑤救急セット(緊急薬や挿管道具、点滴セットなど)
→それを扱える歯科麻酔科医または歯科医師がいる場合。

10.アナフィラキシーショックを患者さんは広く心配すべきものか?

患者さんもアナフィラキシーショックという現象について知っておくことは大切です。
しかし、良く分からずにアナフィラキシーショックと診断されたり、患者さん自身が局所麻酔薬は使えないと勝手な自己判断をしてしまい、実際はアナフィラキシーショックではないのにも関わらず、歯科医院をたらい回しされるケースも見受けられます。
疑われる場合には、施設の情報を収集し、歯科麻酔専門医の在籍等、人材と設備が整った安全な施設で施設の選択を行い、事前に局所麻酔使用の可否をしっかりと確認することが大切だと思います。

歯科麻酔専門医 里見ひとみ

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インプラントの長期安定に関わる因子

年末年始の慌ただしさから、ようやく普段の生活に戻ってきました。
寒の入りも過ぎ、いよいよ冬本番。
空気も乾燥し、巷ではインフルエンザが大流行し始めています。
体調管理に気をつけお過ごしくださいね。

ところでインプラントにどのようなイメージをお持ちでしょうか?

・一生涯使えるもの?
・自分の歯と同じように使える?
・高い?
・トラブルが多い?

一時期はメディアにも多く取り上げられていたインプラントですが、実際のところどのくらい使えるものなのでしょうか?
今回はインプラントの寿命とそれに影響するものについて、ご紹介しようと思います。

インプラントって?

歯を失ってしまった際の治療法(欠損補綴)には大きく分けて、入れ歯、ブリッジ、インプラントの3つが存在します。
ではそれぞれどのくらい長く使えるものなのでしょうか?
欠損補綴の種類による単純比較はできないのですが、治療後 10 年でどのぐらいの人が使い続けているか(10 年生存率)で比べてみましょう。

インプラント 入れ歯 ブリッジ
メリット 健康な歯を削ることがない
周囲の歯に負担をかけない
噛む力が本物の歯に近い
健康な歯を削る量が少ない
取り外して清掃できる
残っている歯や顎の形にとらわ れない
異物感が少ない
つけたままで生活できる
本物の歯の感覚に近い
デメリット 治療期間がかかる
外科治療が必要になる
骨の量や持病によっては適応外となる
(できないこともある)
異物感が強い
金属などが見えることがある
噛む力が弱い
(本来の2割程度)
本数や適応範囲に限界がある
(できないこともある)
健康な歯を削る必要がある
清掃しにくい
10年
生存率
約95% 修理なしでは継続利用困難 約87%

またある研究ではインプラントの早期(上部構造完成前)脱落は 154 本/11311 本(1.4%)、約 9年経過した症例で脱落した数は 46 本/2367 本(2.0%)
脱落していないものの、問題を抱えているインプラントの数は早期で 121 本/11311 本(4.4%)約 9 年経過した症例で 25 本/2367 本(4.2%)
9年間経過を追っている患者さんで、早期、晩期合わせると問題を抱えるインプラントは 45 本/2367 本(7.6%)インプラントが脱落してしまった本数は 72 本/2367 本(3.0%)となっており、約 97%のインプラントが機能しているとの結果が出ています。

では問題を抱えているインプラントや脱落してしまったインプラントは、どのような理由でそのような事態に陥ってしまったのでしょうか。

一番大きな原因は歯周病です。日本人の約8割の人が罹患すると言われている歯周病ですが、実はインプラントも歯周病に罹患してしまいます。
インプラントの約 9.5%が歯周病に感染してしまうそうです。
そのほか、持病(糖尿病や骨粗しょう症)、補綴(被せ物の形)や趣向品(喫煙)などの問題もインプラントの長期予後には欠かせない因子ではありますが、それらは歯周病にも影響を与える因子であり、歯周病の予防がインプラントの長期安定に最も重要な因子だということがわかります。

インプラントは天然の歯とは違い、歯肉(歯茎)とは付着していません、そのためインプラントの歯周病により骨が溶けてしまうとインプラントはすぐにぐらついてきてしまいます。
またインプラントは骨とダイレクトにくっついているため揺れ始めるとさらに骨にダメージが加わり、どんどん骨が溶けていってしまいます。
この悪循環が原因でインプラントが取れてしまうことが多いのです。
最大の敵インプラントの歯周病を防ぐことで、インプラントが“ダメ”になってしまうリスクがかなり下がります。

歯周病に気をつけるためには普段の歯磨き、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
現在インプラントを埋めている方も、そうでない方も、定期的にメンテナンスを受けて、生涯美味しいご飯をしっかり食べることができるようしましょうね。

ちなみに生涯美味しくご飯を食べることができる健康な歯をお持ちの方は、健康寿命も長いそうですよ!

歯科医師 渡辺知明

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フレッチャリズムでQOL up!

皆様こんにちは、研修医の一瀬です。
朝晩気温もぐっと低くなり、冬本番になってきました。
寒くなってくると、すき焼きやおでん、水炊きなどの温かいものが恋しくなりますね。

ところで皆様は普段食事をする際、普段どのくらい食べ物を噛んで食べているのか意識したことはありますか。おおよそ一口に噛む平均回数は10回から20回と言われています。
それに対して、一口に噛む回数の目安は30回と言われています。これは「フレッチャリズム」という考え方が由来しています。

「フレッチャリズム」とは

「フレッチャリズム」とは、米国で時計商をしていたホーレンス・フレッチャー氏が生命保険に入ろうとしたところ、「肥満は短命」という理由で断られたため、様々な医療や健康法を試みてたどり着いた「よく噛んで食べる」という健康法が元になっています。
食べ物をよく噛んで食べるということはよく唾液や、胃液などの分泌がよくなり食べ物の消化や吸収がよくなります。
また、脳が活性化されて満腹中枢を刺激することにより肥満細胞からレプチンというホルモンが分泌されます。
このホルモンの働きにより、食欲が抑えられるため少ない量で満腹感が得られます。
そのため肥満の予防につながると考えられています。
さらに、唾液の分泌がよくなることにより口の中での唾液の働きが活発になり虫歯になりかけた歯を修復したり、細菌の感染を抑えたりして虫歯や歯周病になるのを防ぐことができます。
それ以外に、唾液に含まれる酵素には、発がん性のある物質の作用を抑える働きがあると言われておりがんの予防になると考えられています。
また、よく噛んで食べることにより口の周囲の筋肉が発達し歯並びがきれいになります。
そのため言葉の発音がきれいになります。
口の周囲の筋肉以外にも、前述したように噛む運動により脳が活性化します。
これはホルモンの働きだけでなく脳に酸素や栄養を送る働きも活性化するため、高齢者の認知症の予防に役立つと考えられています。

よく噛んで食べる人は、早食いの人よりも肥満になりにくい

今までよくものを噛んで食べることについて説明をしてきましたが、逆に普段あまりもの噛まないで食べる人と違いはあるのでしょうか。
実は、厚生労働省の疫学調査で、食事を取る際に早食いの習慣がある人はゆっくりと噛んで食べる人と比べて、肥満の傾向があることがわかりました。

このことからよくものを噛んで食べることは肥満を予防する手段として、有効な手段であると再度認識できます。
実際に厚生労働省では一口に30回噛む習慣を進める「噛ミング30(カミングサンマル)」という運動を提唱しています。
これを機に、普段食事をとる時あまり時間をかけずに済ましてしまう方もこれを機によく噛むことを意識して普段よりも時間をかけて食事をしてみてはいかがでしょうか。

歯科医師(研修医)一瀬知久

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歯科治療になぜ顕微鏡を使うのでしょう?

最近は歯科医院のHPで”「顕微鏡」「マイクロスコープ」による治療”という言葉を目にすることが多くなってきたかと思います。

ここ数年で歯科治療に顕微鏡(マイクロスコープ)はなぜ急激に使われるようになったのでしょうか?
また,どのようなメリットがあるのでしょうか?

今回は顕微鏡(マイクロスコープ)を使用した歯科治療の実際についてお話しさせていただきます。

マイクロサージェリー(マイクロスコープを用いた手術)の歴史は、世界初 の手術用顕微鏡が発売された1953 年まで遡ります。
ここから各科で導入が進み、歯科での本格的な導入は 1980 年代、そして2004年には日本顕微鏡歯科学会が発足し、マイクロスコープの普及活動を行なっています。
現在、マイクロスコープの普及率はまだ数%に過ぎませんが、今後の歯科治療においては欠かすことができない重要なツールです。

そもそも、歯科治療は非常に細かな作業です。
私たちの肉眼で認識できる大きさの限界は0.1㎜(100μm)と言われています。
これはちょうど細い髪の毛の太さくらいですが、歯科治療ではそれ以上のマイクロな世界が対象になります。
さらに口腔内は閉鎖的な空間であるため、光が届きにくい上、術者の手指の動きにも制限があります。
そこで、約10〜25倍の拡大機能と強力な照明機能を特徴とするマイクロスコープを使用することによって治療の可視化と精密化を実現しました。

その応用範囲は広く、根管治療、補綴治療、歯周外科治療など多岐にわたります。
以下が大まかな利点になります。

①感染源の見逃しの防止
従来の方法では盲目的に行なっていた為にどうしても汚れの取り残しがありましたが、細かな部分まで感染源の除去ができ、再感染のリスクを軽減します。

②歯の保存の可能性
根管治療において難治性の症例で、従来では抜歯が適応されていた場合でも保存できる可能性が高くなります。

③精密な補綴
補綴治療(虫歯の穴を少し削り、レジンで充填する処置や被せ物を製作する処置など)において歯と充填物との隙間を無くし、二次的に生じる虫歯のリスクを軽減します。
より精度の高い修復物の製作が可能になります。

④最低限の侵襲
歯周外科治療において、歯肉の切開範囲を小さくし、周囲組織の損傷を抑えます。

特に根管治療に関してはそのメリットを遺憾無く発揮します。
今回はマイクロスコープを用いた根管治療についてもう少し詳しくお話ししたいと思います。
まず、根管治療とはいわゆる神経を抜く治療です。
歯の根っこの内部には根管という狭く細長い神経の部屋があり、マイクロスコープを用いた主な治療対象です。
その根管の入り口は細いもので直径が約0.2㎜程でその存在場所には個人差があり、時には石灰化により塞がれてしまっている場合すらあります。

根管の形態は真っ直ぐではなく、一般的に彎曲、狭窄していたり、途中で分岐するなど大変複雑な形をしています。
前述した通り肉眼での限界値が0.1㎜程ですから、いかに視認が困難であるかは想像に難くないと思います。
そのため処置対象の変化に対する認識が不足し、また、技術的な問題や小器具の取り扱いの不備などにより不可抗力的な事故が誘発される場合もあります。
そこでマイクロスコープを用いることにより、次のような処置が拡大視野、強照明下で可能になってきました。

①根管口の探索
色の多少の違いや根管口の連続性を精密に観察できるので明確に視認しながら探索します。

②根管内亀裂や破折の確認
根っこ自体が割れているといくら根管治療をしても功を奏しません。原因不明のまま治療が長期化することを防ぎます。

③石灰化物の除去
石灰化の範囲、健全歯質との境界を明視野におくことにより必要最小限の切削に留めることができます。

④根管内異物の除去
異物としては根管治療終了後に詰めた古い根管充填材や治療時に破折した小器具片などがあり、いずれも感染源となる可能性があるため除去が基本です。これらは根管内の深部での作業になることが多いため顕微鏡の使用が不可欠です。

⑤穿孔部封鎖処置
偶発的に生じた穴の部位を特定して封鎖材を正確に詰めて修復します。

⑥外科的歯内療法
歯の頭からのアプローチではなく歯肉を切開し歯根を露出させ処置領域を直視しながら原因の除去を行います。

一部ではありますが、近年マイクロスコープを使用した根管治療が保険診療の対象となりました。
マイクロスコープの保険適応をきっかけにその有用性が広く認知され、今後幅広く拡大視野下での治療が更に身近なものになっていくことでしょう。

歯科医師 廣田小百合

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最近の高齢者のお口の変化~8020は既に達成?!

30度越えの暑い暑い夏がようやく終わり、台風騒動の後、あっという間に11月になりましたね。
季節は秋です。
目まぐるしい気候の変化についていけず、体調を崩される方も多いのではないでしょうか。
季節の変わり目には自律神経のバランスが変化するために様々な体の不調が出やすく、もちろんお口の中のトラブルも発生しやすくなっています。

普段は何でもなかった歯茎が突然痛み出し腫れてしまったり、物を噛んだ時に痛みを感じたりなどのお口の中の不調は耐え難いものがあります。
こうした不調のサインにいち早く気付き、勇気を持って歯科医院へ行き、原因を知り、早めに治療を受けることは長い人生を健康に生きていくためには非常に重要なことです。

今回は、すでに多くの方がご存知じかと思われますが、8020 「ハチマルニイマル」運動についてお話します。

8020運動は、ざっくばらんに言いますと、“80歳になっても20本以上自分の歯を保ちましょう!”という標語を元にした様々な取り組みのことを言います。
1989年に当時の厚生省が成人歯科保健対策検討会で提唱したのがそもそもの始まりで、その後普及のための様々な取り組みが行われてきました。

平成29年6月2日に厚生労働省の発表によると、8020達成者(80歳で20本以上の歯が残っている人の割合)は51.2%であり、平成23年の調査結果40.2%から増加していることが明らかになりました。
つまり、80歳で8020を達成された方が2人に1人以上となり、過去最高記録を達成したことになります。

出典: 厚生労働省 平成28年歯科疾患実態調査

この結果は、我々歯科医療従事者のみならずまた日本国民にとっても、とても喜ばしいことであります。
また日本国民の口腔ケアへの意識が高まったことを意味します。

高齢者が生涯、いつまでも「いきいき」と暮らしていくためには、なるべく多くの歯でしっかり噛み、充実した食生活を送ることが重要です。
よく噛むことにより、脳の血流が増え、脳神経細胞のはたらきが活発になり、認知症の予防にもつながり、想像以上に良い影響を及ぼします。

高齢者の口腔内は加齢的変化により様々な問題が発生します。

高齢者のお口の中の変化には以下のような現象が挙げられます。
唾液分泌量の減少による自浄作用の低下および口腔内の乾燥(ドライマウス)。
舌や口腔粘膜の状態の変化による口臭の発生、味覚の変化。
歯と、歯周組織にも変化が起こります。
歯と歯肉の境目がクサビ状に擦り減ったり、歯肉が退縮したことにより露出した根面にむし歯ができやすくなるなど。
またさらに、治療後の詰め物や入れ歯が合わなくなってしまうなどです。

高齢になると、歯や歯肉のトラブルばかりでなく、嚥下機能の低下などの飲み込む機能にも問題が発生します。

食べ物や飲み物が食道ではなく気道に入ってしまい、細菌が肺で繁殖して起こるのが「誤嚥性肺炎」です。口腔内の歯周病原菌が唾液とともに呼吸器に流れ込むことによって引き起こされる肺炎です。
日本人の死因原因の第三位にもなっています。恐ろしいですね。

その他にも、糖尿病、心疾患、アルツハイマー、関節性リウマチなど、歯周病と関連のある全身疾患もいくつかあります。

今後の課題

全ての年齢層に言えることですが、しっかりと口腔ケアをすることにより、口腔内の環境が整い、快適な毎日を送ることができるようになります。
さらに健康体の高齢者が増えることによって、介護予防にも大きく貢献します。
今後の超高齢者社会において、歯科医療がどのようにかかわっていくかは我々歯科医師にとって大きな課題の一つです。

高齢者のお口の中により多くの歯が残される様になったことは素晴らしいことですが、さらなる取り組みが必要となります。

ただ単に歯の数が多ければ良い訳ではありません。いかに良い状態で残されているかが重要になってきます。
その為にも、歯科医院だけでの口腔ケアでは追い付かず、病院や、在宅、または高齢者向け施設での連携したケアシステムの充実が今後の課題になると思われます。

歯科医師 大庭美和子

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肺炎予防には口腔ケアが重要です

はじめまして、平成30年7月から千代田ファーストビル歯科にて臨床研修させていただいております大野真季と申します。

今年3月に免許を取得し、歯科医師としてスタートラインに立ちました。
みなさんに貢献させていただけるように日々努力し、一日でも早く一人前の歯科医師となれるように頑張って参りますので、よろしくお願い致します。

・肺炎と口腔ケアの重要性

さて、日本人の死亡原因の上位は、これまで悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が上位を占めていました。
平成23年には、肺炎が脳血管疾患と並び死亡原因第3位になりました。

主な死因別死亡数の割合(平成23年)
出典: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai11/kekka03.html

肺炎の中でも65歳以上の高齢者に限っていえば、その大半は誤嚥性肺炎と言われています。誤嚥性肺炎の原因は、お口の中の細菌である口腔常在菌です。
そのため、お口の中の口腔常在菌を減少させるためには、お口の中を清潔に保つための口腔ケアを行うことが重要です。
下図を見ても分かるように、口腔ケアを行うことにより約10%も誤嚥性肺炎の発症を減少させることができます。

出典:要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究、日本歯科医師学会会報誌2001

また、最近の東京大学の研究発表によれば、癌手術後の肺炎発症率と術後30日以内の死亡率は、歯科医による口腔ケアを受け患者では受けない患者と比較して、有意に低いとの報告がなされています(術後肺炎の発症率は3.8%→3.3%、術後30日以内の死亡率は0.42%→0.30%)。
以上の報告からも、誤嚥性肺炎の予防に対する口腔ケアの必要性が認められてきています。

・口腔ケアとは

口腔ケアには、2つの種類あります。
1つ目は「器質的口腔ケア」です。
これは歯垢や食べかす等を除去することにより歯や入れ歯、口腔内、舌の清掃を行ってお口の中の衛生状態を改善させ、細菌叢を正常化するものです。
2つ目は「機能的口腔ケア」です。
これは飲み込む力などの口腔機能を維持・向上・回復するためのものです。
機能的口腔ケアは、お口のリハビリテーションにもなり、特に加齢等によって飲み込む力が減少する摂食嚥下障害の予防にも大きく寄与します。

出典:https://www.8020zaidan.or.jp/magazine/start_care01.html

・摂食嚥下障害

ご家族の中で、お食事の際にむせたり、咳が出るといった症状がある方はいらっしゃいませんか?
このような場合には「摂食嚥下障害」が考えられます。
食事に時間がかかる、食べると疲れる、食後に痰が出る、食事を摂ると声が変わる、食べ物が口からこぼれる、飲み込んでも食物が口の中に残る、食べ物がつかえるといった症状が見られる場合も同様です。
また、気付かないうちに誤嚥しているものに「不顕性誤嚥」があります。
これは睡眠中に無意識のうちに唾液が気道に流れ込み「咳き込み」や「むせ」などの反射が見られず、気づかないうちに誤嚥しているのが特徴です。

・摂食嚥下障害の検査

摂食嚥下障害を発見するための検査には、簡易検査(スクリーニング検査)と精密検査があります。
簡易検査では、質問票の記入や実際に食物を食べていただき、その状態を観察する検査を行います。
これにより摂食嚥下障害が疑われる場合には精密検査が行われます。
精密検査には、嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)があります。
嚥下造影検査(VF)は、エックス線を用いて透視化で造影剤を含んだ検査食を食べてもらい摂食嚥下の動作を観察していく検査です。
嚥下内視鏡検査(VE)は内視鏡を用いるため、口腔内から咽頭にかけての観察ができ、嚥下中に食塊が通過する様子や、喉頭、咽頭に残存していないか、誤嚥していないかなどを、直接目で見て確認することができます。

嚥下内視鏡検査(VE)では、鼻咽腔喉頭ファイバースコープという機械を用いて検査を行います。鼻から細い管を挿入し、普段食べたり飲んだりしている物を摂取してもらい直接咽頭の様子を観察していくことができます。

嚥下造影検査(VF)と嚥下内視鏡検査(VE)を比較したときの嚥下内視鏡検査(VE)のメリットを説明すると、
①大きな機材ではないため持ち運びすることができ、訪問診療などで自室でも行うことができます。
②特別な検査食などではなく、普段皆さんが口にしているような食べ物や飲み物を使って検査することができます。
③粘膜や分泌物、残っている食べかすなどの評価ができます。
④エックス線を使用しないため、被爆しません。

またデメリットとしては、
①食べ物を噛んでいる間(咀嚼中)や、食べ物が食道を通過しているとき等は観察することができず、観察できる場所が咽頭に喉頭限定されます。
②飲み込んでいる最中(嚥下中)では画像が真っ白になってしまうため(ホワイトアウト)嚥下の観察はできません。

みなさまの中にも、ご自身や身近な方に摂食・嚥下障害の症状がみられる方がいらっしゃるでのはないでしょうか?
以上の症状がみられる場合には、なるべく早く口腔リハビリテーション科や摂食嚥下リハビリテーション科のある病院や歯科医院を受診し検査を受けることをお勧め致します。

歯科医師(臨床研修医) 大野真季

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子供の外傷歯の治療方法と予後

皆さん、こんにちは。
ようやく残暑も終わり、秋風が心地よく日増しに秋の深まりが感じる季節となりました。
秋といえば十五夜「中秋の名月」ですね。
満月を鑑賞する他、十五夜には秋の収穫に対して感謝するという意味があります。
作物で月を造形したものが、お団子。
ススキはこの時期にまだない稲穂の代わりに用いられたお飾りです。
今年の十五夜は9月24日だそうです。

今回は、子供の外傷歯の治療方法と予後に
ついてお話しようかと思います。

「そもそも外傷歯って?」

外傷歯とは、転倒や事故などの外的要因によって折れてしまったり、抜けてしまったりした歯のことをいいます。
外傷歯はその程度や状態によっていくつか種類があります。主な例をあげますと・・・

①歯がかけた(破折)

転倒や衝突により強い衝撃を受けると、歯が欠けてしまいます。欠け方が部分的で軽度な場合は、痛みなどの症状は出にくく、神経(歯髄)や歯茎などへの影響も少ないことが多いのですが、欠けた部分から神経が感染を起こすこともあります。
歯が欠けて神経(歯髄)まで達するような重度の場合は、強い痛みや歯肉の腫れなどを引き起こすことが多くあります。

②歯がグラグラする(動揺・歯根破折)

歯がグラグラになったり、周りの歯肉から出血している状態もよくあります。
歯の動揺は、歯を支える骨の部分がダメージを受けた場合に起こりやすいのですが、歯の根が折れた(歯根の破折)場合にもグラグラになります。

③歯の位置がずれた・めり込んだ(転移・陥入・脱臼)

乳歯や生えたての永久歯(大人の歯)の場合、歯の位置のずれや歯のめり込みが生じることも多いです。

④歯が抜け落ちた・なくなった(脱落・喪失)

歯が完全に生えているところから抜け落ちてしまっている状態です。

⑤歯肉が変色した・歯肉が腫れた

歯の色が変わってくることがあります。
受傷してすぐに 起こりやすい赤みをおびた変色は、神経(歯髄)の中の血管が損傷して充血や内出血を生じたものと考えられ、充血が治れば歯の色も回復することがあります。
一方、数か月して徐々に歯の色が黒ずんでくる場合は、神経(歯髄)が死んでいる可能性が高くなります。
さらに色が悪くなったり、根の周囲に病気ができて歯肉が腫れてくることもあります。

「歯医者さんに行くまでにすべきことは?」

まず、頭を打っている場合(眩暈や吐き気、意識の混濁など)や骨折などの重傷がある場合は、総合病院を受診してください。
そういった症状がなく、歯医者さんに来院される場合は、受傷してからなるべく早く来院されることをお勧めします。

来院される前にできる応急処置としては・・・

①歯がかけた

欠け方が軽度の場合は様子をみてから歯科受診してもかまいませんが、大きく欠けた場合は神経(歯髄)まで達していることが多く、放置すると痛みが出たり、神経が死んでしまいますので、早急に歯医者さんを受診しましょう。

②歯肉から出血している、歯がグラグラする、位置がずれた

まず止血を行います。うがいや濡らしたガーゼで出血部位をきれいにしてから、清潔なガーゼなどで出血部位を押さえて止血を図ります。
歯肉が切れていたり、歯根が折れたり、歯の位置がずれていることも多いので、早めに歯医者さんを受診しましょう。

③歯が抜け落ちた

歯が抜け落ちた場合、条件がよければ歯を元の位置に植え直す(再植)ことができます。
一般的に、歯の組織が生きている短時間のうちに再植すると予後が良好といわれています。
できれば受傷後30分以内に処置することが望ましいため、脱落した歯を「歯の保存液」か「牛乳」につけるか、ラップなどに包んで、できるだけ早く歯医者さん受診をしましょう。

「治療法と予後は?」

①歯が欠けた場合

欠け方が部分的で軽度な場合は、緊急性はありませんが、歯医者さんを受診して詰めたり、かぶせたりという処置をするとともに、しばらくは経過をみる必要があります。
歯が欠けて神経(歯髄)まで達するような重度の場合は、欠け方に応じて神経の処置を行って、最終的に歯を元の形に修復します。
永久歯でも神経の処置をした後は経過をみていく必要がありますが、乳歯の場合は次の永久歯に生え替わるまで定期的にチェックをしていくことが望まれます。
その治療法として、とくに永久歯が欠けて神経がでてしまった場合、感染している神経を部分的に切断して、水酸化カルシウムという薬で保護し、その上からかけた部分の歯を修復していく方法を主にとっています。
特にお子さんや若い方の場合、再生能力が高いので、多くの場合この方法で歯を抜かずに保存することができると思います。

②歯がグラグラしている場合

まずは、エックス線写真を撮って、歯の根の状態(歯根破折の有無)や周りの骨の状態(歯槽骨骨折の有無)を確認する必要があります。
動揺が軽度な場合は、受傷した歯をできるだけ安静にして様子をみますが、明らかな動揺がみられる場合は、両脇の歯と固定して安静を図ります。
また、頻度は少ないのですが、歯根の破折や歯槽骨骨折で歯が動揺している場合は、受傷した歯が保存できるかどうかを診断する必要があります。
保存が可能と判断された場合は、固定処置を行って様子をみます。
歯だけの動揺の場合は1~2週間の固定ですみますが、歯根破折や骨折の場合は少し長めに(2か月程度)固定をします。歯ぐきよりのところで根が折れていたり、根が斜めに折れている場合などは、抜歯になる可能性もあります。

③歯の位置がずれた・めり込んだ場合

治療としては、歯を元の位置に戻し(整復)、両脇の歯と連結して安静を図り(固定)、歯の周りの組織の回復を待ちます。
一方、乳歯や生えたての永久歯がめり込んだ場合は、歯根がまだ未完成なため自力で再び生えてくることが期待できるので、無理に元の位置まで戻さずに様子をみることも多いです。
また、乳歯の位置がずれたり、めり込むことで、乳歯の下で育っている永久歯に影響が出ることもあります。
永久歯の生える方向や、歯の形・色などに影響が出る可能性があるので、永久歯への生え替わりまで定期的にチェック(エックス線検査を含めて)を受けることが望まれます。

④歯が抜け落ちた・喪失した

歯が抜け落ちた(脱落)場合、条件がよければ再植(抜けた歯を再び植える)が試みられます。
受傷から歯医者さんを受診するまでの時間が短く、歯の周りの組織の損傷が軽度で、脱落した歯の保存状態がよいほど、再植の予後も良好になることが期待されます。
かみ合わせを確認しながら、脱落した歯を元の位置に戻して、固定を行います。歯肉からの出血が多い場合は縫合を行い、止血を図ります。固定は通常2~6週間くらい行います。
脱落した歯がなくなってしまったり、再植が困難で抜歯になった場合も対処が必要になります。
歯の外傷はおもに上の前歯に起こりやすいので、見た目も悪くなり、また発音や食べることに影響がでます。永久歯では一般的に入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの治療法があげられ、歯並び・かみ合わせやその他の状況に合わせて適当な治療法を選ぶことになります。
一方、乳歯や学齢期に永久歯がなくなった場合は、次の永久歯が生えるまで、または顎の成長が止まるまでは、調節のしやすい入れ歯タイプの装置を使うことが多いです。

⑤歯が変色した・歯肉が腫れた

歯の神経が死んでしまって歯の色が黒くなってきてしまった場合や、歯の根の先に膿がたまって歯肉が腫れてきてしまった場合などは、神経を抜く治療を行います。

いかがでしたでしょうか?お口の中や周りというのは、出血すると唾液と血が混ざって思った以上に血が出ているように感じらと思います。ただでさえ、お子さんが転倒などで歯を折ってしまったり、唇などを大きく切ってしまったりした場合、お子さんだけでなく親御さんも気が動転してしまうことも多いかと思います。大したことないかもとは思わずに心配なことがありましたらいつでも歯医者さんにいらしてくださいね。

歯科医師 福島 歩

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寝ている間に歯科治療

~静脈内鎮静法のご案内~

こんな経験ありませんか?

・怖くて歯医者に行けない!
・嘔吐反射があって、歯科治療を受けられない!
・今までに局所麻酔や歯科治療で気分が悪くなったことがある!
・恐怖心を取ってくれる方法があったらいいのに!と思ったことはありませんか?

静脈内鎮静法をご存知ですか?

静脈内鎮静法とは不安を取り除いてくれる鎮静剤を用いて、患者様は寝ているような状態で局所麻酔を併用し歯科治療を行うため、治療中のストレスをほとんど感じません(無痛治療)。
また、全身麻酔ではないので呼吸を止めたり、入院で行うことはなく、通常の歯科ユニットで日帰りで行えます。
鎮静中は歯科麻酔専門医が常時監視し、担当が歯科治療に専念出来るようにしています。
帰宅時にはしっかりと安定するまで、歯科麻酔専門医で管理させてもらい、安全な状態で帰宅してもらいます(付き添いの方がいるとさらに、安全です)。

下記のようなメリットとデメリットがあります!

*メリットは

①恐怖心がなくなります。
②歯科治療中(特に型取りや奥歯の治療)の嘔吐反射は精神的な原因が多く、鎮静を行うと消失します。
③血圧や脈拍が安定します。
④歯科治療中の記憶があまり、残りません。
⑤日帰りで行えます。
⑥長時間の手術(親知らずの抜歯やインプラント手術)のストレスがなくなります。
⑦点滴より鎮痛剤などを投与できます。

*デメリットは

①当日は乗り物の操縦が出来ないです。
②術後にアルコールが飲めないです。
③点滴が必要です。
④麻酔時間を入れると治療時間が普段より長いです。

どんな手順で行うの?

当日は歯科麻酔医による問診を行います。
その後、トイレに行ってもらい、診療室に入室します。
入室後に血圧計と脈拍、動脈血酸素濃度を測るクリップをつけます。
異常値でなければ、静脈路を確保し点滴を行います。
点滴から鎮静剤(不安を取り除いてくれる薬)を体重から算出した量を投与します。
投与後1~2分で気分が落ち着いてきて、入眠します。
声掛けに反応する程度(声かけしないと寝ています)で、局所麻酔を行い、局所麻酔が奏功したら、歯科治療を行います。

術中はモニタリング により、異常時(疼痛や低酸素症など)には迅速に対応が可能です。
終了次第、鎮静剤を止めて、覚醒を待ちます。
来院時と同じ状態になったら、帰宅です。

行う前の注意事項は?

1. 体調は整えてきてください(鼻呼吸が困難な時には避けましょう)。
2. 内服薬は事前に担当医へ伝えてください。(大抵の薬は継続しますが、糖尿病の薬は 食事を抜いた場合は内服しないでください)。
3. 鎮静中の悪心・嘔吐予防に2時間前から禁食、1時間前から禁水してください。

行った後の注意事項は?

1. 安静に過ごしてください。
2. 車・自転車・バイク等の乗り物の操縦は控えてください。
3. アルコールは飲まないでください。
4. 常用薬は継続してください。心配な場合には歯科麻酔医にお尋ねください。
5. 帰宅時には付き添いの方がいると安全です。

鎮静薬へのアレルギーや内服薬との相互作用、現在の体の状態によってはかけられない症例もあります。
既往歴や内服薬、アレルギー等ある場合には、担当医または歯科麻酔担当医の里見までご相談ください。

歯科医師/日本歯科麻酔学会専門医 里見 ひとみ

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歯科医院で出来るもうひとつの検診
~お口のガン検診~

こんにちは
夏は始まったばかりだというのに、うだるような暑さに早くも音を上げております。

皆さんも体調には気を付けておられることとは思いますが、たまには専門の医療機関で検診を受けて、日々の体調管理に役立ててください。

さて、皆さんが歯科医院で「検診を受ける」というとどのようなものを思い浮かべますか?
むし歯ですか?それとも歯周病ですか?実はそれ以外にも、私たちにできる重要な検診として、「口腔がん検診」というものがあります。今回はそれについてご説明致します。

「口腔がん」て何?

「口腔がん」とは、口の中やその周囲に出来るがんのことで、できる部位によって、舌がん、歯肉がん、口底がん、頬粘膜がん、などと呼び方が変わります。
「口腔がん」は、体に出来る癌の全体の僅か2%程に過ぎませんが、以前に比べて患者数は急激に増加しています。また、「口腔がん」に罹患すると死亡率は約46%と、半数近くの方が亡くなってしまう恐ろしい病気です。

「口腔がん」の症状

「口腔がん」には、他のがんと違い、目で見て、手指で触れることができるという大きな特徴があります。
皆さんも、自分のお口の中に下のような症状がないか確認してみましょう。

①口の中に硬いしこりがある。
②口の中からが出る。
③20日以上治らない口内炎がある。
④口の中が痛いしびれる。
⑤口の中が腫れている。
⑥口の中に白い部分、または赤い部分がある。

「口腔がん」になりやすい人

「口腔がん」には、その人の生活習慣が大きく関係します。
下記の項目に心当たりのある方は、特に気を付けましょう。

①1日にたばこを10本以上吸う。
②葉巻やパイプを吸う。
お酒を飲むとすぐに顔が赤くなる。
④アルコール度数が強いお酒が好き。
⑤舌やほっぺたをよく咬む
入れ歯が同じところにいつも当たって痛いが、我慢している。

「口腔がん」検診について

診療所で行う検査の基本は、問診、視診、触診です。
当院では、ベルスコープという口腔内観察装置を使って、口腔粘膜をより詳しく観察することができます。
疑わしい病変を発見した場合は、すぐに専門の医療機関に紹介します。

「口腔がん」の治療法の多くは外科手術です。舌や顎、頬の一部もしくは大部分を切除せざるを得ず、審美的にも機能的にも大きな障害が残ります。
最低でも1年に1回は検診を受けましょう。

歯科医師 松崎麻美

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ヒトラーは1945年に死亡
歯と頭蓋骨の分析

アドルフヒトラー。第二次世界大戦時、ドイツにて圧倒的なカリスマ性で独裁政治を行い、ユダヤ人を迫害した悪名高い歴史上の有名人。
映画の題材になり、最近ではヒトラー独裁政治の象徴ハーケンクロイツのマークが、デザインに使われると全国ニュースとしてお茶の間に流れるなど、知らない人がいない人物だと思います。

ところでヒトラーについての都市伝説を聞いたことはありますでしょうか。
第二次世界大戦時、ヒトラー率いるドイツはUFOを完成させ、自殺と見せかけ月の裏側へ移住し、現在も生きている。
何らかの方法でブラジル、アルゼンチンに移住し余生を過ごしたという文章がCIAの機密文書にあった。
などなど、、、

残念ながら、そういった都市伝説は、科学研究の力で完全に否定されてしまいました。

http://www.afpbb.com/articles/-/3175341

【5月21日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazi)の独裁者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)が1945年にベルリンで死亡したことは間違いないとする研究論文がこのほど発表された。
研究者らは、ロシアで保管されている歯を調べ、青酸カリと銃弾によって死亡した可能性が高いとの結論に至った。

シャルリエ氏ら5人の専門家からなる研究チームの論文は、欧州内科学会の「European Journal of Internal Medicine」誌に掲載された。

ロシアの連邦保安局(FSB)と国立公文書館は2017年3月と7月にヒトラーの遺骨の調査を許可した。
調査の許可は1946年以来となった。
シャルリエ氏によると、いくつかの虫歯やの義歯を調べたところ、白い歯石の付着が確認でき、また肉の繊維の痕跡はなかったという。
ヒトラーはベジタリアンだった。

シャルリエ氏は、今回の研究によって死因を特定することが可能になるとしている。
「これまで、自らの命を絶つために青酸カリを使ったのか、それとも銃で頭を打ち抜いたのかは不明だったが、おそらくその両方だったのだろう」
歯の分析では火薬の痕跡が見つからなかった。
これは銃を口にくわえて発砲していないことを示唆するものだ。
おそらく首や額に向けて発砲されたのだろう。
他方で、虫歯に青みがかった付着物を確認しており、青酸カリと義歯に含まれる金属の化学反応が起きたことが考えられる。
との研究結果が出てしまったのです。

ちなみにアドルフヒトラーは歯医者嫌いで有名だった。
という話は聞いたことあるでしょうか?
ヒトラーは幼少期、劣悪環境下で食生活をしていたため、晩年歯周病や虫歯に悩まされていたそうです。
1944年には1年で10個以上の歯の詰め物を行った記録が残っており、右側の歯にはブリッジがあり、1944.7.22のヒトラー暗殺未遂事件の際は破片が顔に当たりブリッジがはずれてしまい非常な痛みに苦しんだとの逸話も残っています。

現在の技術の進歩で、歯から故人の死因まで特定できるようになってきました。
歯科の世界では最近、3Dプリンターや3Dカメラによる詰め物の型取り制作、虫歯だけを取り除く薬、歯の銀行(ティースバンク)、マウスピースによる矯正などなど、様々な新しい技術が実用化され始め、治療結果も良好な成績を残すようになってきています。

アドルフヒトラーみたく歯に悩むようになる前に、しっかり歯をケアしていきましょうね。
気になる治療法等ございましたらお気軽にお尋ねください。

歯科医師 渡辺知明

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